AERA 2023年10月16日号より

分断に苦しむ自治体、疲弊する地方頼みは限界

 遅れる最終処分場の選定とは対照的に、片岡町長肝いりの洋上風力発電の計画は大きく前進している。

 今年5月、洋上風力発電の「有望な区域」として、国は、寿都町や神恵内村を含む岩宇・南後志地区沖や島牧沖など道内5区域を指定した。いまは実現に向けて「促進区域」への格上げをめざしている。

 北海道における最終処分場の誘致はこれから最大の関門が待ち受ける。

 道北の幌延町に、日本原子力研究開発機構の幌延深地層研究センターがある。放射性廃棄物を持ち込まない「核抜き」を前提に、最終処分場で使われる地層処分の研究をするため2001年に完成した。

 原発から出る核のごみは「ガラス固化体」にされ、鋼鉄製の容器などで覆われ地下に埋められる。原子力関連施設を誘致する動きが幌延で始まったのは1980年代。一時は貯蔵施設の誘致話も持ち上がったが、道内に反対運動が広がり、白紙撤回された。

 盛り上がる反対運動に押される形で、北海道は2000年に都道府県では初めて核のごみを「受け入れ難い」と条例で宣言した。鈴木直道知事は条例を理由に寿都や神恵内が次の調査に進むことに反対している。知事の同意がなければ次には進めない。

 文献調査では公開資料をもとに火山や活断層などの有無を調べている。近くまとまる報告書は、分断に苦しむ寿都町では「ほぼ全域が概要調査の適地」という内容になりそうだ。一方、大きな反対運動のない神恵内村では適地は一部にとどまるとみられている。

 ガラス固化体の放射線量が自然と同じレベルに下がるまで約10万年を要する。それだけの期間、地震大国の日本で安全に隔離できる適地があるのかはわかっていない。

 疲弊する地方がそれぞれの事情で手を挙げるのを待つやり方はもう限界ではないのか。原発推進に舵をきる岸田政権は最終処分場の選定でも国が主導する方針だ。科学的な最適地はどこなのか。決断を地方任せにせず、国が中心となって探り続けるしかない。(朝日新聞編集委員・堀篭俊材)

AERA 2023年10月16日号より抜粋