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 もう一人は、同じキャンパスに通う19歳の「aさん」だ。
 
 aさんは「発達障害のグレーゾーン」にいる。複数の作業を同時並行でやることなど、日常生活で物事を上手にこなせない場面が多くある。
 
「あれとこれをやって、と同時に言われると、分からなくなっちゃいます」。緊張する場面や、予定がいきなり変わるのも、頭の中が真っ白になってしまうので苦手だ。
 
 「吃音(きつおん)」の発話障害があるため、流暢(りゅうちょう)には話せない。話すときに同じ音を繰り返したり、次の言葉が出るまでに間があいたりすることがある。 
 
 筆者の質問にも、言葉をつなぎながら一生懸命に話してくれたaさん。子どものころから、仲間外れにされることが多かったそうだ。

 「嫌われていたというか、いい印象では見られていないんだなとは感じていました」
 
 クラスメートの輪に入ろうとすると「aちゃんはちょっとね~」と、遠ざけられてしまう。

差別用語に近い言葉でからかわれ

 授業で文章を音読する場面になると、内容がわかっていても頭の中が真っ白になってしまい、言葉が出てきてくれない。
 
 そのうちに、言葉のいじめにもあった。
 
「漢字が読めないやつ」「気持ち悪い」
 
 差別用語に近い言葉でからかわれたことも覚えている。
 
「言われたことは、まだ頭に残ってしまっています」
 
 教室にいるのがつらくて、中学生の時は支援学級に遊びに行くようになった。支援学級で遊べない時は、図書館に居場所を求めた。

「うまくできないことばかりで、どうすればいいのかが分からなさすぎて。自分という存在を、どう表現したらいいのかも分かりませんでした」
 
 転機は高校で入った写真部だ。カメラにはまったく興味がなかったが、先輩が誘ってくれたことがうれしかった。
 
 顧問に写真をほめられたり、コンテストで入賞したりすることにやりがいを感じた。前向きな気持ちになれたのは、初めての経験だったかもしれない。大学でも自然に仲間ができ、小中学生のころとは違った生活を送っている。

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「自分の影みたいなもの」