車椅子の人がどんな日常を過ごし、何を感じているのか。“車椅子ギャル”・さしみちゃんと東京・渋谷を歩いた。AERA 2023年9月25日号から。
【写真】さしみちゃんが「都内の駅で一番行列ができる」というエレベーターがこちら
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渋谷パルコへ向かった。到着して思わず私が感動した。段差がない! そのまま、入り口そばの店舗にも入れた。
さしみちゃんも笑顔だ。
「息がしやすいです。商品を見る気がわいてきました」
早速、ネットで見て気になっていた靴を見に行った。「そうそう、この靴!」とお目当ての靴を見つけて、店員を探す。4歩ほど先に立っている。
「在庫ありますか?」
「ピンクならありますが、黒はないんです」
店員は声をかけるたび、3歩ほど近づき、話が終わると元の場所に戻ってしまう。なんだか微妙な距離感だ。
「基本的に遠巻きの店員さんが多いです。私は親しみやすいようにしてるんですけど。もっとグイグイくるものですか?(笑)」
正直、そうだ。私が買い物するとき、一度話しかけたら、店員はよほど忙しくない限り横について、ニーズを聞いてくれるように思う。もちろん、ケース・バイ・ケースと思うけれど。
ただ、決して雑な対応ではなかった。求められれば、にこやかに説明してくれていた。もしかしたら緊張していたのかも、と思い当たった。車椅子の人が来たけれど、どう接したらいいかわからない。だから、戸惑う。そんなふうに見えた。
街に繰り出すと、さしみちゃんはよくこう思うのだという。
「車椅子の人が来ると、想定されてないんだなあって」
過去、店に予約の電話をしたとき、「わからないから、難しい」という断り方をされたことが何度もあったという。
「例えば、階段があるとか、『こういう理由で対応できない』とはっきり言ってくれたらいい。考えてないから無理って悲しくないですか」
記者がさしみちゃんと食事をする店を予約したとき、入れるかと尋ねると、「あー…以前、車椅子の人が来たことがあるので大丈夫だと思います」と言われた。さしみちゃんは言う。
「その『あー…』の間に、『考えてなかったな』っていうのが、にじみ出てる気がするんです」