また、こゆきさんは学校でも困難を感じることが多かった。例えば、学校の授業は基本的にずっと退屈だったという。
「幼少期から読書好きだったので、そもそも知ってることが多かったですし、授業のスピードも遅いなと思っていました。もちろん、それが多くの人にとって最適なスピードなのは理解していました。だからこそ、『暇だな』と思いながら、授業中は資料集を眺めたり、電子辞書に入っている百科事典や青空文庫をひたすら読んで過ごしていました。でも電子辞書を持てたのは高校生からだったので、それまでは暇で仕方がなかった。『良くて暇、悪くて拷問』といった気持ちでした」
また、こゆきさんは書字に苦手意識を持っていた。
後年に受けた知能検査「WAIS-Ⅳ」の結果を見ると、「言語理解」が146、「知覚推理」が130、「ワーキングメモリー」が147なのに対し、「処理速度」が96と、極端に低い。「処理速度」は「視覚情報を、どれぐらい迅速かつ正確に処理できるか」の指標だ。これが低いと板書や手先を使った作業が苦手になったり、時間内に課題を終えることができなかったりといった困りごとにつながりやすくなる。
「板書を取らないといけなかったことも、学校が嫌いだった理由のひとつ。『書くより、もっと自分に適した方法がある』と思っていましたし、そもそもあんまりノートを取る必要性を感じてなかったので、できれば取りたくない派でした。でも、それだと先生は怒るんですよね」