前社長の藤島ジュリー景子氏

「特にジャニーズの問題では、最も罪を償わなければならないジャニー喜多川氏が他界しているという特殊な背景があります。もちろん事務所の社会的責任は追及されるべきなのは言うまでもありませんが、所属タレントの契約見直しまでになると、対象が拡大しすぎという印象を受けます。タレントに性加害の十字架を負わせるのはフェアではありません。テレビ番組やCMで姿を見た時は、素直に楽しんで応援するという姿勢でいいのではないでしょうか」

 世界中で「#Me too」運動が巻き起こるきっかけとなったハーヴェイ・ワインスタイン事件では、圧倒的な権力を持つ男性プロデューサーが弱い立場の女優を狙うという図式だった。世論が「セクハラ」という概念から想像できる通りの被害内容だったと言える。だが、今回はその図式とは少し異なるとも言える。

「ジャニー喜多川氏による性加害は、性についての知識も乏しかった可能性がある少年が、同性の大人から深刻な被害を受けたところに最大の特徴があります。もちろん『芸能界でデビューできるかどうか、その決定権はジャニー氏が握っている』という上下関係は存在しますが、そこに同性愛と少年愛の問題も密接に絡んでいます。世界を見渡しても前例のない特殊な事例と言えるはずで、この点も議論の混乱に影響を与えているのではないでしょうか」(同)

 企業のCM契約やテレビ番組の出演は当分、見合わせるべきだという論調に対しても、辛酸さんは行き過ぎを感じているという。

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テレビ局スタッフとタレントの“人情”もある