主権者教育というかしこまったテーマを、お笑いのパワーで若者たちに分かりやすく届ける(撮影/高野楓菜)
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 笑下村塾代表、たかまつなな。大学生のときに芸人としてデビュー、NHKの職員になった後に、時事YouTubeになり、今は「笑下村塾」の代表も。肩書はたくさんあるが、一貫してたかまつななは「若者と政治をつなげたい」「日本を良くしたい」という思いで動いてきた。その一つが、「主権者教育」の出前授業。あなたには社会を変える力があるのだと、笑いと共に子どもたちへ熱い思いを届ける。

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 笑いで世直しを標榜(ひょうぼう)する会社「笑下村塾(しょうかそんじゅく)」代表のたかまつなな(30)は7月上旬、群馬県立高崎商業高校にいた。うだるような暑さの体育館に集合した3年生277人は、テレビで見る芸人らに会えるとあってどこか浮足立っている。その日の授業のゲスト講師はスリムクラブとパーマ大佐(30)。

 当初、芸人たちの話に笑い転げていた生徒たちは、パワーポイントを用いた高速パワポ芸で説明される「選挙」や「民主主義」の話に少し表情が引き締まる。次は、1票の重みの積み重ねが大きな力を持つことを実感させる逆転投票シミュレーションゲーム。ゲームをしつつ、投票に行かなければ自分たち若者世代がいかに損をするかを知り、どよめきが生まれた。たかまつが呼びかける。

「芸人が客に合わせネタを選ぶように、政治家もネタを選ぶ。投票に行くのがおじいちゃんが多ければ、どうしたって高齢者向けの政策になるよね」

 若者の投票率が低いと自分たちの影響力も弱くなり、高齢者を重視した政策が増える「シルバー民主主義」になりがちと解説する。

 さらには、若者は社会を変えられないと信じ込んでいるが、笑下村塾の出前授業を受けた生徒が、実際に行動し社会課題を解決した事例を幾つか挙げ、今自分はどんなことを変えたいと思っているか、そのためにはどんな方法があるかを考えてもらい、発表させた。

 校則を変えたい、制服を変えたい、という身近なところから、自転車通学の道が狭いから広くしたい、電車の運賃が高いなど行政や企業に訴える声も。変える手段として署名を集める、SNSに投稿する、メディアに訴え、行政や企業に陳情するなど、具体的な案も出された。

「主権者教育」とは何か 笑いを用いて教える

 そして授業の総仕上げとして、5人ずつグループに分かれ、人狼ゲームのような形式で「悪い政治家」を見抜くゲームが始まった。ほんの少し前まで、政治や選挙は他人事と捉えていたような生徒たちが、目を輝かせながら議論し、誰が悪い政治家なのか互いの言葉や態度を観察している。たかまつは、そんな様子を嬉しそうに見つめる。

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