AERA 2023年9月25日号より

「父の世代は、希望する仕事ではなかったとしても、雇用の形は正社員が当たり前。経済が上向きだったから、給与は年齢とともに上がって、年金も確実に受け取れる。僕もずっと、それを『ふつう』だと思い、『ふつうになりたい』と願ってきたけど、できなかったんです」(男性)

「不登校の『その後』研究」で知られる関西学院大学の貴戸理恵教授(45)は、

「今の40代は、人口がある程度多くて受験競争が激しかった世代です。教師による体罰もまだ容認されているような厳しい教育環境下で学び、新卒一括採用で成立していた日本の社会システムを信じさせられながら育ってきたのに、いざ就職する時には破綻していた。その戸惑いは大きく、きちんと就職できた人と漏れ落ちた人との格差が中年になっても続いています」

 と指摘し、男性の言葉に理解を示す。

「『ふつう』だと思っていた人生をまっとうできない自分と周囲を比べてしまい、苦しむ人がたくさんいます。さらに、親世代は、働いていない子どもを『恥』だと思ってしまいがちで、親子関係が悪化したりひきこもりがちな状態が続くなどのケースもあります」(貴戸教授)

(編集部・古田真梨子)

※AERA 2023年9月25日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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