高度経済成長期に社会に出た親と就職氷河期を経験した子、7040世代。子どもは親世代にとっての「ふつう」の人生を歩めず、苦しんでいる。AERA 2023年9月25日号から。
【図】AERAネットアンケートなどによせられた、さまざまな声はこちら
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都内で暮らす男性(43)が心身の不調を感じるようになったのは、都立の進学校に通っていた頃だ。入学時の成績はほぼ最下位。もともと明るい性格で、めげることなく必死で勉強をして上位に食い込めるようになったが、どこか無理をしていたのだろう。定期試験が近づくと、嘔吐を繰り返した。
1浪して、私立の有名大学に進学したが、第1志望ではなかったこともあり、前向きになれず、友だちをうまく作れなかった。好きな歴史を学ぶ学科だったが、世の中は就職氷河期の真っ只中。男性はこう振り返る。
「歴史なんて勉強しても就職できないだろう、と。だんだん勉強する意味がわからなくなってきて、苦しくて動けなくなった」
メンタルクリニックに通ったが、状況は改善せず、自宅にひきこもった。大学は8年間在籍したものの、結局中退。体調が上向き、なんとか非正規の仕事に就くことができたのは、15年ほどが過ぎた36歳の時だ。
公務員だった70代の父親は、男性を強く責めることはなく、寄り添ってくれていたが、ことあるごとに「正社員になれよ」と口にする。男性は、その言葉に傷ついてきたという。