「別人の情報が登録されていた」など、トラブル続きで批判も出ているマイナ保険証ですが、現在、利用者はまだ少数です。医療機関によってはマイナ保険証の顔認証付きカードリーダーを設置したものの、ほとんど未使用というところも多いと聞きます。では、なぜニーズがないのに、カードリーダーの設置が進んだのでしょうか。東京都渋谷区で歯科医院を経営する若林健史歯科医師も、昨年設置したといいます。その経緯や現状などを聞いてみました。
【写真】若林歯科医院に設置されたマイナ保険証の顔認証付きカードリーダーはこちら
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うちのクリニックの受付にもマイナ保険証の顔認証付きカードリーダー(以下、カードリーダー)が置いてありますが、ほぼ未使用です。マイナ保険証ではカードリーダーからパソコンのネットワークを通じて、患者さんが加入している医療保険や自己負担限度額などを確認、特定健診の情報や薬剤情報の閲覧ができます。「オンライン資格確認システム」というもので、医科や歯科業界では「オン資」と呼んでいるようです。
保険診療をしている医療機関ではオン資の導入がこの春から義務化されています。当院は自費診療と保険診療の両方を扱っているため、オン資を導入しています。今回の取材にあたって利用者の数を調べたところ、約1カ月の間に保険証の確認が必要だった450人のうち、マイナ保険証を使った人はたった2人でした。
振り返ればコロナ禍の前の2019年、地元の歯科医師会からオン資の案内がありました。そのままにしておいたところ、周囲の歯科医たちから、「早く申し込みをしないと、乗り遅れるよ」「国が決めたことだから、ちゃんとやったほうがいいよ」などといわれ、慌てて登録の手続きをしました。ただ、その後はまったく、この件に関する連絡が来なくなったので、すっかり忘れていたのです(どうやら半導体の不足で、オン資の設備に必要なパソコンなどの周辺機器が品薄だったことが理由のようです)。
それが突然、動き出したのは昨年のことでした。「2023年4月以降、オン資の登録が義務化されるから、順次、バーコードリーダーなど機器の設置をしてください」と歯科医師会を通じて、国からの通知が来ました。