機器の設置まではけっこう面倒でした。まずは厚生労働省のホームページから、カードリーダーを一つ選びます(邪魔にならないように一番小さいものにしました)。次に、カードリーダーから診療情報などにオンラインでアクセスできるよう、専用のパソコン(Windowsに限るといわれました)を購入。その後、ネットワークにつなげる作業を専門の業者に頼みます。運用テストをおこなった後は、運用の開始日を決め、入力しなければいけません。これでいよいよ後には引けないと、ちょっとドキドキしました。なお、すべてを入れると約40万円の経費がかかりましたが、こちらは国からの補助金でまかなうことができました(手続き完了後に必要書類を出すと、補助金をもらえるようになっています)。

 しかし、せっかく設置したにもかかわらず、冒頭でお話しした通り、マイナ保険証の利用者は23年8月現在、ほとんどいません。ならば、「利用を呼び掛けてはどうか?」という声もありますが、このように、利用者が少ないのでマイナ保険証のメリットが私自身、よくわからないのが正直なところなのです。ですから患者さんに自信を持ってすすめる気にはなれません。

若林歯科医院に設置されたマイナ保険証の顔認証付きカードリーダー。利用者はほぼいないという

 また、昨年9月までは紙の保険証よりもマイナ保険証を使うほうが、患者さんの負担額が高くなっていました。わずかな金額ですが、これも推奨してこなかった理由です(今は紙の保険証の負担額のほうが高くなっています)。さらにテレビなどで報道されるマイナ保険証によるトラブルの数々も、及び腰になってしまう理由です。私の友人の歯科医たちも似たような状況です。

 私より世代が上、あるいはネット環境に慣れていない歯科医の多くは、導入の義務化に反対しています。厚生労働省のホームページによれば、23年8月6日現在、歯科医院でオン資の申し込み手続きをした人の割合(参加率)は75.3%、手続きをしていない残り約25%の施設には、反対しているところがけっこうあると考えられます。

 意外かもしれませんが「パソコンに不慣れ」「Wi-Fi環境がない」歯科医院は少なからずあります。とくに高齢の歯科医が経営している場合です。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ
「われわれに廃業しろというのか!」と怒る歯科医も