内田:今の日本の学校教育では、査定や評価にリソースを費やし過ぎていると思います。僕の記憶する限り、90年代のバブル崩壊までは、評価とか査定とか格付けとかいうことが学校教育の中で話題になることはほとんどなかったです。バブル以前の日本企業は、ふつうは年功序列、終身雇用制でした。つまり人事考課しない。何年かある職位にいたら、みんな揃って係長になり、課長になる。部長以上になれる社員は選別されたけれど、課長まではほぼ全員がなれた。だから、職位ではなく、仕事の内容で能力の差をつけた。同じ課長だけれど、どれくらい重要な仕事を任されているか、部下が何人いるかが違う。でも、給料は一緒。90年代まではだいたいどこの組織もそうでした。人事考課に手間暇をかけるということをしなかった。
これが高度成長期の人事でした。この時期はどの組織でも、身の程知らずに、分際をわきまえずに新しい事業に取り組む社員が企業を牽引していった。こういう人たちは別に出世がしたくて、給料を上げたくて仕事をしていたわけじゃなくて、仕事が面白くて仕方がないから仕事をしていた。だから、組織も査定とか評価ということは二の次で、「とにかく面白いことをしたい」という社員にフリーハンドを与え、予算枠を与えて、好きな仕事をさせた。