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※写真はイメージです(Getty Images)

 1990年代のバブル崩壊からしきりに「能力主義・成果主義」が叫ばれ、「もらい過ぎ」をむしり取ることに人々が熱中するようになった日本。これが影響し、今の日本では他者の視線を過剰に気にする子どもたちが増えているのではないだろうか。政治学者の白井聡氏と哲学者・内田樹氏の新著『新しい戦前 この国の“いま”を読み解く』(朝日新書)の中では、バブル以降の査定主義について語られている。同著から一部を抜粋、再編集し、対談形式で紹介する。

【写真】教師も生徒の査定で疲弊している

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「他者の視線」を過剰に気にする子どもたち

内田樹(以下、内田):今の学校教育のシステムでは、スケールの大きい人間が育てられないことが問題です。小学生までは結構のびのびと育っているんですけれども、中等教育の6年間でそれが痛めつけられる。

白井聡(以下、白井):金沢大学の融合研究域融合科学系教授の金間大介さんが書いた『先生、どうか皆の前でほめないで下さい――いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社、2022年)という本が話題になりました。今の若者に対して、まじめで素直、打たれ弱く、繊細で、何を考えているかわからないといったイメージがあるだろう。そのとおりだが、それはほめられたいけれども、みんなの前でほめてほしくない。とにかく目立ちたくないという「いい子症候群」なんだと金間さんは言っています。

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内田樹

内田樹

内田樹(うちだ・たつる)/1950年、東京都生まれ。思想家・武道家。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想。神戸女学院大学名誉教授、京都精華大学客員教授、合気道凱風館館長。近著に『街場の天皇論』、主な著書は『直感は割と正しい 内田樹の大市民講座』『アジア辺境論 これが日本の生きる道』など多数

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