私は教育者、そして子育てをしている親としても読みました。この本で観察されている学生たちの状況は自分が勤め先の大学などで目にしているものと同じで、すごく納得しました。親として注目したのは、そういうメンタリティーに子どもはいつからなるのかという点です。それは小学校の3、4年生ぐらいだと。この話には心して子どもを育てなければいけないと考えさせられました。
幼稚園などに行くと、どの子もひたすら元気で素晴らしいですよね。本当にいいなと思います。けれどもこれが十数年たって、大学に来ると全く元気のない子になっているわけです。子どもたちがいつからそうなるのか、ずうっと疑問でした。金間さんによると、そのターニングポイントは小学校の中学年なのです。
具体的にどんな変化が表れるのか。たとえば、小学校の先生が授業で何か質問をする、「わかる人は手を挙げて」と。1年生、2年生だと「はい、はい」とみんな元気に手を挙げます。それが5年生くらいになるとぱったりとやみます。要するに、他者の視線を過剰に意識し始めるのが3年生、4年生の頃というわけです。それ以降、子どもたちはどんどん元気がなくなっていく。そんなふうにこの本には書いています。
内田:他者の視線を気にするのは成熟の過程では当然起きることですけどね。
白井:簡単に言えば、その意識の仕方が子どもの中ですごく過剰になっているということでしょうし、他者の視線が自分にぶつかって来ることを通じて主体形成するということができなくなってきているのだと思います。