でも、いつの頃からか、勝った方が高笑いをして、敗けた方は顔面蒼白というようなものの決め方が支配的になった。僕は橋下徹さんの影響が大きかったと思います。2015年の大阪都構想の1回目の住民投票で僅差で負けた時、記者会見で「どうして負けたと思うか」と聞かれて彼は「都構想が間違っていたからでしょう」と答えたんです。僕はそれを聞いて、この人は危険な政治家だなと思いました。だって、都構想って、彼らが最優先で推進してきた政策でしょう。だったら、住民投票で負けても「政策としては正しかったが、有権者の理解を得られなかった」でいいと思うんです。でも、彼は「負けたのは掲げた政策が間違っていたからだ」と総括した。これを一部のメディアは「潔い」というふうに肯定的に受け止めたようでしたけれど、僕は非常に危険な考え方だと思った。というのは、これを逆にしたら、僅差であれ多数を制した場合に「正しかったから多数を制した」という言い方が可能になるから。「多数派であること」が「正しい」と同義なら、「少数派である」は「間違っている」ということになる。間違っているなら、そんな少数派の意見に配慮する必要はまったくない。間違っている政策に何が悲しくて譲歩しなければならないのか。

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