社長が退任しない背景には、損保ジャパンはあくまでBM社にだまされた被害者、というスタンスがあるのかもしれない。同社広報部に一連のAさんの証言について事実確認すると、こう回答があった。
「現時点では、BM社への保険金査定や入庫紹介業務の運用に問題があったとは結論付けていない。BM社の水増しを見抜けていたのに放置していたのでは?という点は、まだ疑義の段階です」
この回答をAさんに伝えると、「もし本当にBM社の水増しに気づいていなかったとしたら、逆に会社としてヤバいと思いますよ」とあきれ果てた様子だった。
「保険金査定に携わる全社員に、『今までBM社への対応に違和感があった人はいますか?』というアンケートをとったら、ほぼ100%『ある』と答えるはず。でも、本社からはいまだにそういう調査は下りてこないし、現場の声を聞かないで、何を金融庁に報告したのか。今回、私は会社を陥れるためではなく、問題点をちゃんと正してもらいたいという思いから話をしましたが、金融庁への報告内容次第では、『本社はなに寝ぼけたこと言ってんだ』って、私みたいに告発する社員がゴロゴロ出てくると思います」
「まだ会社を見限りたくない」という、社員の切実な思いが届くことを願うばかりだ。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)