損保ジャパン広報部に、BM社案件の査定金額について見解を求めると、「平均的なお支払金額として、他の整備・板金事業者と比較して高いということはありません」と回答があった。しかしAさんは、「他社の倍とは言わずとも、1.5倍くらい高いのは当たり前。たとえばプリウスのリアバンパーを交換する場合、一般的には10万円以下で済むにも関わらず、BM社の場合はたいてい12、13万円ほどはかかっていました」と、きっぱり。
「だから、BM社の保険金過大請求疑惑が持ち上がって、昨年6月に社内で自主調査することになったときは、現場としては『今さらかよ』っていう感じでした。同業他社が調査をはじめるから、ウチも流れに乗らざるを得なかったんでしょうね」
入庫紹介のときも“BM社推し”
BM社を優遇する運用は、保険金査定に限った話ではない。Aさんの部署では、事故を起こした顧客に車の修理工場を紹介する「入庫紹介業務」も行っており、そこでも、あからさまな“BM社推し”の実態があったという。
「入庫件数が少ないBM社工場があると、営業部門から『ちょっと面倒だけど頼む』って依頼が来て、わざわざ隣の県のお客さまにその工場を紹介することもありました。さすがに、車の引き取りはお客さまの代わりにBM社が行ってましたけど」
BM社への入庫件数を無理やり増やそうとするのは、自賠責保険の契約という“にんじん”をぶらさげられていたからだ。BM社は、入庫件数に応じて各損保会社に自賠責契約を割り当てており、契約獲得をめぐって損保同士で激しい競争が繰り広げられていた。