とは言え、昨年の7月下旬には、「待った」の声を上げる社員もいた。前述のとおり、昨年6月からBM社の不正請求疑惑についての自主調査を行っていた部署の担当者が、役員室に、「調査の結果、現時点で取引再開はできない」と報告に行ったのだという。しかし、その数日後、損保ジャパンはBM社への入庫紹介を再開した。
同社広報部に本件を把握しているか確認したところ、「入庫紹介の停止、再開、再停止に関する経営判断は社外調査委員会による調査事項のため、回答を差し控える」と、ノーコメントだった。
現場が、社長に思うこと
Aさんは、「役員まで話が通っていたなら、最終判断は白川(儀一)社長が下したはず」と話す。Aさんが話す「担当者の報告」と同じ時期の昨年7月には役員会議が開かれており、その際に「社長自らが不正の可能性を認識しながら取引再開を促す発言をしていた」という報道も出ている。
「白川社長は、親しみやすいし、社内の評判は悪くないんですよ。でもこれだけの騒動になっている以上、会社のトップとして無傷では終われませんよね。実際、BM社の不正請求によって車の修理費が高くなった結果、本来自腹で払える範囲だったのに保険を使い、翌年の保険料が上がるという経済的被害を被ったお客様もいるわけですし。8月中旬に社内向けの衛星放送で緊急の社長メッセージが流れたとき、私の部署では『退任するのか?』って勝手に予想していたんですけど、ところがどっこい、『社員全員で力を合わせましょう』みたいな話で。みんなけっこう引いてましたね」
9月1日朝の社内向けの衛星放送では、「既に報道されている、昨年7月の役員会議での社長の発言は事実」と認める発表があったが、社長本人からの言葉はなく、「フロア内全員しらけている」(Aさん)という。