国民民主党が2022年度当初予算案に賛成したのは、「国民民主党が主張するガソリン税のトリガー条項凍結解除に岸田首相が賛成する意思表示をしてくれた」というのがその理由だが、実際には岸田首相が同年2月18日の衆院予算委員会などで「あらゆる選択肢を排除しない」と言ったのみだった。しかし背景にある人間関係から、「岸田首相と玉木氏のホットラインで合意があった」と伝わっている。

 前原氏はこの時、予算案を決議した本会議を欠席し、採決に参加しなかった。「急な腹痛」が表向きの理由だったが、「予算に全面的に賛成するのは野党ではない」という強い信念が窺えた。そしてトリガー条項凍結は解除されず、ガソリン代などの値上げについては補助金で対処された。

前原氏が維新と交わした合意文書に玉木氏は……

 路線をめぐって露呈した両者の対立は、もうひとつある。2022年の参院選での選挙協力をめぐって日本維新の会と交わした合意文書の問題だ。

 日本維新の会の馬場伸幸共同代表(当時)と藤田文武幹事長、国民民主党の前原代表代行と榛葉賀津也幹事長は同年4月20日、夏の参院選で静岡選挙区と京都選挙区で相互推薦すること、「身を切る改革を実行」すること、「政権交代の実現」を目指すことを含む合意文書を交わした。

 だが会見の後、これを読んだ玉木氏は驚愕した。「身を切る改革」とは日本維新の会のキャッチフレーズであり、同日午前に開かれた国民民主党の両院議員総会で了承された内容ではなかった。また「政権交代の実現を目指す」とは、日本維新の会との「連立宣言」ととらえられかねない表現だった。

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「玉木党」の限界とは