そうした限界を突破するために、前原氏は出馬したのだろうが、ネックは発信力の弱さだ。8月21日の会見の後、玉木氏は議員会館内でマスコミオープンの出陣式を行ったが、前原陣営は東京ではマスコミを全面的にシャットアウト。そもそも前原氏の出馬会見自体が、野党記者クラブに限定した案内だった。
国民民主党の代表選は、本来なら野党のあるべき姿として、立憲民主党や日本維新の会などを巻き込み、大いに注目されるべき選挙になるはずだった。それがいまいち盛り上がらないのは、党の路線の争いではなく、候補者個人の路線の争いに矮小化して見えるからだろう。
身分を超えて広く仏教を広めるべく、ひたすら称名念仏に徹した空也上人は、「山川の末に流るるとちがらも 身を捨ててこそ浮かむ瀬もあれ」と詠んだ。国民民主党の本当の将来は、今回の代表選の後にあるのだが、果たして……。
(政治ジャーナリスト・安積明子)