マルーン色でお馴染みの阪急電車。「この先、100年後も引き続き、沿線価値の向上、大阪梅田エリアの街づくりを推進し、この地域とともに発展してまいります」(阪急)
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 沿線の街づくりに注力してきた日本の大手私鉄。関東では東急、関西では阪急が代表的な存在だろう。しかし人口減少やテレワークによる通勤客減で、今までのビジネスモデルの見直しが迫られている。AERA 2023年9月4日号より。

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【街づくり】東:東急×西:阪急

 いま「大手私鉄」と呼ばれるのは西武鉄道や阪神電鉄はじめ、首都圏や関西圏など大都市に16社。駅を核とした街をつくり、沿線を開発してきた。その代表が「東の東急」と「西の阪急」だ。前者は東京と神奈川に路線を持ち、後者は大阪の梅田を中心に大阪・神戸・宝塚・京都などを結ぶ。

「鉄学者」を自任する、政治学者で放送大学の原武史教授は、まず阪急について、「民の力で事業を展開した」と指摘する。

「創業者の小林一三は、福沢諭吉の存命中に慶応義塾で学びます。そこで、福沢の独立独行の思想的影響を受けたと考えられます」

 阪急の歴史は、明治時代にまでさかのぼる。1907(明治40)年、小林は三井銀行を退職し、箕面有馬(みのおありま)電気軌道の経営に関わる。3年後の10(明治43)年、箕面有馬電気軌道(現・阪急宝塚線と阪急箕面線)を開業させた。梅田(現・大阪梅田)-宝塚と、石橋(現・石橋阪大前)-箕面間を結ぶ路線だ。

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