AERA 2023年9月4日号より

選ばれる沿線になる

 多くの大手私鉄はコロナ禍のドン底から回復し、売上高などは回復してきた。一見安泰のようだが、人口減少の波は必ずやってくる。

 ある大手私鉄の幹部は打ち明ける。

「定期券収入が戻らない。鉄道事業だけで稼ぐのは厳しい」

 鉄道経営に詳しい、江戸川大学の大塚良治(りょうじ)教授(経営学)は、「今までのビジネスモデルに依存する限り鉄道会社に未来はない」と指摘する。

「選ばれる沿線となるためには、鉄道の域から脱した街づくりや観光も含め真の『生活総合産業』になることが必要です」

 原教授も「小林一三のような戦略は時代遅れになってきている」と語る。高度経済成長期のように働く人口が多かった時代はよかったが、人口が減り、コロナによってテレワークも増えるなか、通勤客は減っている、と。

「対策として、子育てしやすい沿線をアピールする鉄道会社も少なくないが、それだけでは不十分。駅直結のシニア向け住宅をつくったり、乗ること自体を目的とする電車を走らせて沿線住民以外の客を取り込むなど、発想の転換が必要な時に来ている」

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年9月4日号より抜粋

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