戦後の民主化や産業化とともに、大きく変わった「結婚」。しかし、現代はその「近代的結婚」が「崩れ始めている時代」だと中央大学教授で家族社会学者の山田昌弘氏は分析する。山田氏の著書『結婚不要社会』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し紹介する。
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前近代社会では、結婚していない人の居場所がありました。このことは拙著『「家族」難民──生涯未婚率25%社会の衝撃』(朝日新聞出版/2014年)などで詳述していますが、前近代社会では結婚していなくても、たとえば「部屋住み」といったかたちで、嫡男ではない独身者が村の中で暮らし続けることが保証されていました。また、日本ならお寺に入る、ヨーロッパなら修道院に入るという生き方もあったわけです。
要するに結婚しない、できない、してはいけない人たちが一定程度の割合でいて、その人たちをどう経済的に処遇するか、アイデンティティをどうするかという問題を解決する居場所が用意されていたわけです。
しかし近代社会というのは、「結婚していない人の居場所がない社会」としてスタートしたのです。