今年は2年生ながらチームの主戦として活躍した慶応・小宅雅己

 慶応(神奈川)が連覇を狙う仙台育英(宮城)を破って優勝を果たした夏の甲子園。107年ぶりの優勝ということもあって大きな盛り上がりを見せたが、全国各地では既に来年春のセンバツ出場をかけた秋季大会がスタートしている。果たして2024年の高校野球界を牽引するチームはどこになるのだろうか。

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 甲子園決勝を戦った慶応と仙台育英に注目が集まるが、再び頂点を目指すのは簡単ではないだろう。まず新チームのスタートが最も遅れるというは大きなビハインドとなる。優勝した慶応はエースの小宅雅己、決勝でも好投した左腕の鈴木佳門、4番も任せられた加藤右悟と2年生の主力が残るのは強みだが、神奈川大会の決勝で熱戦を演じた横浜など県内にもライバルは多く、関東大会に出場するための道のりも平たんではない。

 連覇まであと一歩に迫った仙台育英も、2年生の中心選手が多かった昨年とは違い、今年は主力の大半が3年生だっただけに、ここからチームを仕上げていくのは時間がかかるだろう。U18侍ジャパンの代表監督も務める明徳義塾の馬淵史郎監督は夏の甲子園での解説で、旧チームから投手が残るよりも捕手が残った方がプラスは大きいと語っている。仙台育英も尾形樹人が下級生の頃から正捕手だったことが、今年の準優勝に繋がった部分も大きかったはずだ。

 ではこの2校以外のチームだが、やはり力がありそうなのが広陵(広島)だ。今年春夏の甲子園でも好投し、実績では世代ナンバーワンの高尾響だけでなく、捕手としても打者としても高い能力を誇る只石貫太も2年生で、バッテリーがそのまま残るというのは何よりも大きなアドバンテージである。1年生ながら早くも甲子園のマウンドも経験した堀田昂佑も今後が楽しみな右腕だ。真鍋慧、田上夏衣など下級生の頃から中軸を任されていた野手は多くが入れ替わるが、選手層も厚いだけに来年も甲子園で上位に勝ち進めるチームになる可能性は高いだろう。

 東日本に目を移すと、健大高崎(群馬)も有力だ。まず何よりも1年秋から不動の正捕手で今年春のセンバツでも活躍した箱山遥人の存在が大きい。スローイングはもちろんキャッチングやブロッキングも安定しており、打っても4番を任せられるなど攻守ともに高いレベルを誇る。これまで多くの捕手を輩出している同校の中でも、総合力では歴代ナンバーワンという声もあるほどだ。さらに1年生ながら早くも140キロを超え、春の関東大会でも好投した石垣元気、佐藤龍月の2人の存在も大きい。ともにただスピードがあるだけでなく、コントロールなどのレベルも高く、石垣は右腕、佐藤は左腕というのも大きなプラスだ。ここ数年は夏の群馬大会をなかなか勝ち上がることができていないが、他にも下級生の好素材は非常に多く、来年は一気に甲子園で上位進出してもおかしくないだけのチームと言える。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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