10年半勤めた商社を辞めることを決意した永崎だったが、特にあてがあったわけではない。

 ただ、辞めてから本を読み、自分の人生はなんのためにあるのだろうと来し方を振り返る時間ができた。

「僕の生まれた小倉って、熱い男がモテるんです。不良やヤンキーにしても、体育祭で斜に構えているヤツはよしとされない。ヤンキーだけど、めちゃくちゃ頑張って走る、そういう文化だったんです。それが僕には大事な要素で、一生懸命やっている人を皮肉ったり、叩(たた)いたりするんじゃなくて、まっすぐ生きている人が格好いいみたいな社会をつくりたい、と漠然と考えてました」

 14年9月、永崎は、「ナガサキ・アンド・カンパニー」を起こす。とりあえずの事業項目は、教育事業とコンサル。しかし、仕事らしい仕事はなく、知り合いから紹介された健康器具の販売代理店となり、1台100万円もする器具をバッグに詰めての飛び込みセールスを始める。機器自体は臨床試験結果も出ていてインチキというわけではなかったが、高額な器具は簡単には売れなかった。

「ネクタイをしめて、鍼灸(しんきゅう)治療院や美容院に飛び込み営業をする。シッシッとかやられながら汗まみれで売るわけですが、金はなく、日銭を稼がないといけないので、必死だった。結局、10台売ったんですけどね。ただ、昔の同僚にはそんなみじめな姿は見せられないし、人と会うのが怖かった」

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