その後、人事部から鉄鋼製品本部、ブラジル、オーストラリア駐在などを歴任した永崎に転機が訪れる。入社から10年が過ぎていた。

 ヘッドハンティングの会社からアプローチがあったのだ。転職の意思はなかったが、初めて人生には別の選択肢もあると知った。一方、社内での影響力が増すにつれ、エースへの風当たりも少しずつ強くなってきていた。

「『自分が駐在員としてフロントでリアルと向き合っていて、その声が届いてないなら残念です』などと、納得いかなければ納得いくまではっきり上司にも言ってしまうタイプだった。そんなあるとき、SABC4段階の人事評価でBがつけられたんです。半ば諦めの境地でした。まあ、生意気で可愛くないやつと映っていたんでしょう」

三井物産退職後に起業 迷う中で出合った「宇宙」

 決定打は、一時帰国したときにたまたま渋谷の書店で手にした一冊の本だった。出光興産創業者の出光佐三をモデルとした『海賊とよばれた男』(百田尚樹著)である。

「同じ北九州出身の人だし、『うわー、かっけえ』と思ってしまった。それに比べ、俺は何もやってない。でも、まだやってないだけじゃん、やればいいじゃんと思っちゃったんですね。それがトリガーだった。三井物産の中で偉くなって、いろんなことをやってみたいという思いは強かったけれど、そのためには、社内で自分を抑えて評価を上げなきゃいけない。それは自分の性格としてできないとはっきり悟ったんです」

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