「JAXA」が公募したのは、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟である「きぼう」から船外に超小型衛星を放出する事業。それを史上初めて民間事業者に開放するというものだった。この権利を使って、今後いかに事業展開できるかを数社の宇宙関連事業者が提示し、競うというのがこの日のプレゼンの目的だった。
「JAXA」から求められているのは、ビジネス開拓力であり、営業力、そして、様々な手間のかかることを引き取れる技術力ということなのだろう、と永崎は当たりをつけた。
「パワポをつくり、『日本には新産業が必要で、世界で勝てる産業をつくりたい』といった大義をはじめ、話すことを暗記し、質疑応答に備え、ブラッシュアップし、目をつぶっても喋(しゃべ)れるぐらい準備しました。人生であれほど練習したことがないっていうぐらいに念入りにやりました」
この日、2018年4月20日、そんな永崎の努力と熱意は、見事に結実したというわけだった。
商社に就職してすぐ「515事件」で注目される
一方で、設立間もないスタートアップ企業が「JAXA」の案件を勝ち取ったことは、宇宙産業界に衝撃を与えた。商業的アプローチで総合的に宇宙をとらえ、世界に打って出ようという新企業は、新鮮な驚きをもって斯界(しかい)に迎え入れられていた。