選挙から3カ月経っても首相が決まっていなかったタイで、ようやく首相指名選挙が実施される見通しだ。8月16日、下院議長が指名選を22日にも実施する考えを示した。
本来であれば、下院の総選挙で国民の支持を得て、最大政党となった革新系の前進党が中心の政権が成立しそうなはずだが、タイの特殊な“お国事情”からそうはならないようだ。国民には失望の色が見える。
これまでの経緯をおさらいすると、タイの国会は下院と上院に分かれており、5月14日に下院の総選挙が行われた。その結果、軍寄りの与党に対抗する野党の前進党が躍進し、151議席を獲得して最大政党になった。
その後、同じ野党のタイ貢献党などとの連立で合意し、野党は312議席になり、下院(定数500)の半数を超えた。野党連合は前進党が擁立したピター氏を首相候補に推した。
軍系政党を与党に導くからくり
以前なら首相は下院議員の投票で決まっていたため、今回の議席数であればピタ-氏に決まっていたところだが、いまは首相を選ぶ方法が違う。
2014年に軍がクーデターを起こして軍事政権を樹立し、その後の憲法改正で、首相指名選挙に上院議員も加わる構造に修正した。上院の定数は250。下院と合わせて750票となり、首相になるには376票が必要になる。
上院議員の大半は軍系の国家平和秩序維持評議会が選任する。つまり軍の影響を強く受けている。過半数の壁は高い。これが軍系政党を与党に導くからくりだった。