それは水面下での連立工作に反映されていく。

 タイ貢献党は、前進党のピタ-氏が首相に選出されなかったことから、軍寄りの与党を構成していたタイ矜持党との連立を発表する。首相指名選挙での過半数には達しないが、連立の条件は、与党をめざす連立から前進党をはずすことだった。

 それを受けて、タイ貢献党と前進党の連立合意は解消。政局は最大政党の前進党を孤立させる方向に動きつつある。国外に追放されているタクシン元首相の帰国も噂されている。

なにも変わらない

 こうして、民意が反映されることのない連立の動きとなっていく。

 前進党に投票したバンコクの保険会社で働くMさん(39)は、連日流れるニュースを追いながら、「元通りだな。なにもかわらない」とため息をつく。

 同じように前進党に投票したバンコクのホテル勤務のSさん(31)は、

「前進党は改革を掲げて若者たちがつくった党。でも軍や利権を持つおじさんたちに潰された感じ。僕の父親なんか、『それ、見たことか』って冷ややかにいうんです」。

 バンコクでコンサルティング会社を経営するPさん(45)はこう言う。

「タイ人の政権交代への熱は冷めてしまっています。なにも変わらないっていう失望感があるだけ」

(下川裕治)

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