「ぼくの目標は甲子園ではありません。プロ野球選手にしてください」 メジャーリーガーとしてマリナーズで長く活躍したイチローが愛工大名電の中村豪監督に初めて会った時に言った言葉だという。中学生のころから高い目標を持った選手だったそうだ。自信の塊のようなイチローをどう育てていったのか、中村監督の言葉を、『高校野球 名将の流儀――世界一の日本野球はこうして作られた』(朝日新書)から一部を抜粋してお伝えする。
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イチローは泣かなかった。高校最後の夏、敗れ、走り寄った金網越しに
中村豪さんは愛工大名電(愛知)の監督を約20年にわたって務め、教え子14人をプロ野球に送り出した。「おれは選手を型にはめんから、それがよかったんかな」と柔和な笑顔で語る中村さんに、イチロー選手との3年間を振り返ってもらった。
イチローはね、中京(現中京大中京)や東邦も欲しがった選手なの。だけど、うちに来てくれた。おれのところなら、変にいじらず育ててくれると思ったんやないかな。
初めて会った時、口数は少ないけど、自信の塊のような目をしとったのが印象深い。