松坂との対決を通じて、「あれくらいの実力があって、初めてプロで通用する」と痛感した上重は、高校からプロ入りの道を選ばず、立大に進学。2年の秋に東大戦で六大学史上2人目の完全試合を達成したが、3年以降は肘の故障などで思うような成績を残せず、最終的に野球継続を断念した。「プロは行くだけでなく、活躍してこそ価値がある」と考え、冷静に自分自身を分析した結果でもあった。

「人がやらないことをやるというのが、自分の人生なんじゃないのかな。そんなことを思ったんです。甲子園で延長17回をやって、大学で完全試合をやって、今度はアナウンサーになる。そういう突拍子もないことをやっていくのが、自分の人生なんじゃないかって。決まった道を行くのは、僕は嫌いなんで」(矢崎良一著「松坂世代 マツザカ・ジェネレーション」 河出書房新社)。

 そんな松坂世代の一人は、25年経った今も“松坂のライバル”として多くのファンに記憶されている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。
 

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