1日置いた後のオレンジジュースの菌。減少しているのがわかる

 こういったことが起きたのはなぜなのか。佐藤教授によると、pH(ピーエイチ)の値が関係していると考えられるという。pHとは水溶液(物質を溶かした液)の性質を表す単位のひとつで、0~14の値で示される。pH7が中性で、それより値が小さいと酸性、大きいとアルカリ性の水溶液ということになる。

 そのため、pHの値が低いスポーツ飲料(pH3.48~3.88)とオレンジジュース(pH3.93~3.94)では細菌の増殖が抑えられた。一方、麦茶系飲料(pH5.77~6.08)では(A)で細菌の増殖が見られたと考えられるという。

「酸性度が強い液体内では、細菌の細胞膜がダメージを受けて、増殖したり、栄養を取り入れたりする機能が弱くなります。要は細菌の元気がなくなるということです」(佐藤教授)

 佐藤教授によると、口の中には、7百~千種類の細菌が生息し、数も(例えば唾液1mL中に)1億個以上もいる。そう考えると、菌が増殖した麦茶系飲料であっても、(A)で飲んだ直後の1万個レベル近くから百万個レベルに増殖したに過ぎず、「1万個レベルでも菌の数としては多いと思う。しかし、中身は自分自身の口腔内細菌ですし、直ちに下痢や食中毒などを引き起こす細菌数であるとは言えない」と佐藤教授は言う。

 それでは、ペットボトルに口をつけて飲むことで、食中毒菌などが中に入り、それが繁殖する危険性というのは無いのだろうか。

「ゼロだとは言えませんが、我々の体に生息する身近な食中毒菌で言うと、ブドウ球菌があります。これは人の皮膚であったり、微量ではありますが口腔内にも存在しています。私たちはこのブドウ球菌も検出できる状況下で研究を行っていますが、増殖したという結果は出ていません」(同)

 そしてこう続ける。

「安全だとも危険だとも断言はできませんが、細菌の数で見れば、マスコミで盛んに言われているように即座に危険だとは言えないのではないか、というのが我々の研究から推測です」

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