持ち運びに便利なペットボトル。夏場は飲む機会も多くなる。飲料によっては、一度口をつけた後、高温下で持ち歩くことで菌が繁殖して、再び飲む時に食中毒などの危険がある、ということをよく耳にするが、実際どのくらい危険があるのだろうか。
臨床化学が専門の新潟大学医学部保健学科(大学院保健学研究科)の佐藤拓一・教授は、「私たちが行っている研究結果から推測すると、直ちに健康への被害が生じる危険があるとはいえないと考えられる」と話す。
同教授と大学院生の河内美帆さんは、ペットボトルのスポーツ飲料とオレンジジュースを対象に飲用後の菌の数などを調べる研究を行った。研究では、10~20代の健康な男女に両飲料をそれぞれ100mlずつ飲んでもらい、飲んだ直後と37度で1日置いた場合の細菌数を比較。細菌は、飲料そのもの(A)と飲み口(B)から採取した。
研究から、口をつけて飲んだ場合、千個レベルの細菌が容器内に入り込むということがわかった。1日置いたときの細菌の数は、(A)(B)ともに、菌の数が減少していたという。具体的な数値は、スポーツ飲料は飲んだ直後に(A)には千個レベルの細菌が、(B)には1万個レベル近くの細菌が見られたが、1日置くと(A)はほとんど細菌が確認できず、(B)も10個レベルに減少していた。オレンジジュースでは、(A)(B)ともに千個レベルから10個レベルに減少していた。
「スポーツ飲料やオレンジジュースはどちらも糖分を多く含む飲料なので、細菌にとって住みやすい環境なのかと思っていましたが、むしろ、1日後に細菌が減少しており、意外な結果でした」(河内さん)
一方、麦茶系飲料でも同様に飲用直後の細菌量と(A)(B)の細菌量を比較したところ、(A)では菌の増殖(1万個近くから百万個に増加)が見られ、(B)では飲んだ直後とほとんど変わらない量の菌が残るという結果が計測された。