みんなと遊んで気づいた「違い」
好奇心が旺盛な都央さんに体調の変化が現れたのも、幼稚園のころだった。日曜日の深夜に嘔吐(おうと)を繰り返した。救急車で運ばれたこともある。だが、疑われた感染症ではなかった。
その後も日曜日になると吐くことが続き、「心理的なもの」と診断を受けた。幼稚園での集団生活がストレスになっているようだった。夜にうなされることもあり、ドッジボールがある日は体調が悪そうに見えた。
後から、ボールが無秩序に動くルールが嫌で、体が拒否反応を起こしているとわかった。都央さんは「どんなルールでみんなが動いているかがわからなくて、怖いな、嫌だなっていう気持ちが強くなったんです。みんながランダムに動いて、ボールが自分めがけて飛んでくるのも怖かった」という記憶がある。ドッジボールがある時は、トイレに逃げ込んだ時もあった。
そのころから、周囲との違いも感じるようになったという。
「自宅で遊んでいる時は感じなかったのですが、幼稚園でみんなと過ごすようになって、ちょっと周りの人と話が合わないとか、周りの人が好きなことが自分はあまり好きではないとか、思うようになりました。ほかの友達が遊んでいるものもあまり面白いと感じられないなということもありました」(都央さん)
元素のことなどを話しても興味を持ってもらえないため、気持ちをセーブしながら周りの人と話していたという。
それまで、純子さんは都央さんのことを「ちょっと変わっているところがある」と思っていた。敏感で靴下は同じメーカーのものしかはかない。ただ、初めての子育てで他の子どもと比較はできず、「少しこだわりがあるのかな」と感じていた。周囲から「ギフテッド」の存在を教えてもらったのは、そんな時だ。知人に勧められ簡易的な検査を受けたところ、IQが高いとわかった。小学1年の時に受けた検査でIQが154だった。
「息子のつらさを初めて知った」
IQが高いとわかった時にはどんな心境だったのか。
純子さんは「息子がギフテッドかもしれないってわかった時に、お母さんって自分の子どもがお友達と同じように遊んで、同じように進学して、と知らず知らずのうちに思っているんだなって気づかされました。『普通じゃない、人と違う』ということが当時は不安でした。違うということを認めたくないという気持ちもありました」と当時の思いを語る。