2019年の桜を見る会で挨拶する安倍晋三首相(当時)
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 安倍晋三元首相による数々の虚偽答弁が発覚した「桜を見る会」問題。2020年12月24日には記者会見が行われたが、まるで「苦し紛れの弁明」が繰り返され、責任を取ることなく流されたままに……。“物言う弁護士”郷原信郎氏は、「政治に『最低限の信頼』を取り戻すためには、『虚偽答弁』の動機と経過を明らかにしていくことが不可欠だった」と振り返る。朝日新書『「単純化」という病 安倍政治が日本に残したもの』から一部抜粋、再編集し、解説する。

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政治資金と個人資金の一体化

 安倍氏の説明は、前夜祭をめぐる費用補填について何とかして追及をすり抜けようと腐心したのであろうが、その結果、安倍氏に関連する政治資金の処理に関する重大な問題を自ら明らかにすることになった。

 安倍事務所では、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出の支払いをしていたと説明していた。それは事務所で扱う政治資金と個人の資金とが一体化し、最終的に、政治資金としての支出と個人の支出とに振り分けるというやり方がとられていたということだ。

 そのようなやり方によって、前夜祭の費用補填については、合計800万円もの費用を、後援会として費用負担すべきところを、資金の拠出者の安倍氏が認識しないまま、個人資金で負担していたということなのである。

 安倍氏については、政治資金と個人の資金の区別すらついておらず、どんぶり勘定になっていたということであり、逆に、政治資金が個人的用途に使われる可能性も十分にあることになる。これは、「昭和の時代」の政治家の政治資金処理であり、政治資金の透明化が強く求められる21世紀においては、全くあり得ないことだ。

 前夜祭の費用負担に関連する安倍氏の説明は、ひたすら、自らの犯罪・違法行為の疑いをすり抜けようと、なりふり構わず、巧妙に組み立てたのであろうが、それが、かえって、安倍氏という政治家の政治資金処理に関する根本的な問題を露呈することになった。

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弁明での「虚偽」の疑い