問題は「契約主体が個々の参加者だなどという『荒唐無稽な説明』を、誰が考えたのか」という点だ。その説明に関しては、安倍氏も、「秘書から事実に反する説明を受けた」とは言っていない。公選法違反・政治資金規正法違反を免れる「言い訳」として、「契約主体は個々の参加者」という苦し紛れの説明を作り出したのは、安倍氏自身なのだろうか、それとも、そのデタラメな説明を敢えて進言した「知恵者」が誰かほかにいたのだろうか。
いずれにせよ、ホテルとの契約主体についての虚偽答弁について、安倍氏を問い質せば、「意図的な虚偽答弁」であったことが否定できなくなることは確実だった。
前夜祭の費用の補填を繰り返し否定していたのに、実際には多額の補填が行われていたことについて、安倍氏は、「費用補填を認識していなかった」と説明し、そのように認識していた理由について、野党の追及が始まった後の2019年11月に、自分の執務室から東京の安倍事務所の責任者に電話をかけて「5000円の会費で全てまかなっていたんだね」と確認し、その後「会場代も含めてだね」と確認した、と説明した。
しかし、前夜祭の問題について、国会での追及が始まった後に、安倍氏から、電話でそのように言われて、「同意」を求められた秘書が、「そうではありません。5000円以外に別に支払いをしています」と答えることなどできるはずもない。安倍氏の聞き方は、どのような費用がかかったのか、収支は発生したのかなどについて「事実を聞き出す」ものではない。「すべての費用は参加者の自己負担」と決めつけ、秘書側が、それに反する事実を説明できないよう抑え込んだだけだ。秘書としては権力者の安倍氏の意向に従うしかなかった。
それは、森友学園問題などでも繰り返されてきた「忖度の構図」と全く変わらない。
森友学園問題では、「私や妻は一切関わっていない。関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」という国会答弁を行ったことが起点となって、佐川宣寿・元財務省理財局長以下が、その首相答弁が事実であることを前提に動かざるを得なくなった。その結果、近畿財務局では、決裁文書の改ざんまで行われ、職員の赤木俊夫氏の自殺という痛ましい出来事にまで至った。