議院内閣制は、総理大臣を中心とする内閣が、国会で真摯に誠実に答弁することが前提とされている。その総理大臣が、自らの政治上の責任に関わる重要な事項について説明不能の状況に陥ったのであれば、職を辞することになるのが当然だ。ところが、安倍氏は国会でも、記者会見でも「説明にならない説明」を繰り返した。そのため、「全国の法律家による告発」という形で公選法違反等の犯罪の嫌疑が司法の場に持ち込まれ、東京地検特捜部の「最低限の捜査」で虚偽答弁が明らかになった。

 安倍氏の首相在任中に検察捜査の動きが表面化することがなかったことについては、当時、「官邸の守護神」とも言われていた黒川弘務・東京高検検事長の存在との関係も取り沙汰された。

 もともと安倍氏の説明は、検察捜査によらずとも、国会の国政調査権でホテルニューオータニから明細書や領収書を提出させれば容易に判明していたはずの明白な「虚偽」だった。ところが、国会では、そのような「最低限の事実確認」すら行われず、検察も安倍首相辞任後になってようやく捜査に動き出した。その結果、「虚偽答弁」が明らかになるのに1年近くを要したのである。

弁明での「虚偽」の疑い

 虚偽答弁が明らかになった後の安倍氏の「説明」についても、疑問点・問題点が多数残った。

 安倍氏が説明未了の重要な点は、私がYahoo!ニュース個人の《「ホテル主催夕食会」なら、安倍首相・事務所関係者の会費は支払われたのか》と題する記事などで繰り返し指摘してきた「ホテルとの契約の主体」の問題だった。

 安倍氏は、国会答弁で、「安倍晋三後援会は夕食会を主催したが、契約主体は個々の参加者だった」と説明していた。それについて、私は2019年11月当時から、「『桜を見る会』前夜祭に関して、安倍首相が『説明不能』の状態に陥った」と指摘していた。

 虚偽答弁についての2020年12月の国会での説明後、野党の「総理主催『桜を見る会』追及本部」の質問状に対して、安倍事務所は、上記の契約主体に関する答弁を「事実と異なる答弁」の一つとして2021年1月5日付けで回答した。

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繰り返されてきた”忖度の構図”