落合監督が指揮を執った最終年の11年にヤクルトと最大10ゲーム差をひっくり返してリーグ連覇を飾ったが、このシーズンのデータが興味深い。419得点、チーム打率.228はリーグワースト。チーム最多本塁打はトニ・ブランコの16本塁打が最多だった。1試合の平均得点は今年の前半戦同様に3点に届いていない。だが、チーム防御率2.46はリーグトップ。ロースコアでセットアッパーの浅尾拓也、守護神の岩瀬仁紀につないで逃げ切る試合展開が必勝パターンだった。

 他球団の首脳陣は、「あの時の中日は僅差のリードで守り抜く姿勢が徹底していた。落合監督の考えが選手に浸透していましたね。ノーアウト満塁で併殺を打っても三塁走者が本塁に還って得点を取ったらOK。ああいう割り切りができるチームは強い。落合監督はナゴヤドームだからああいう戦い方をしたのだと思います。巨人や他球団の監督だったら違う野球をしていたでしょう。凄い監督だったなと改めて感じますね」と振り返る。

 落合監督が退任した12年以降、長い低迷期が続いている。12年間優勝から遠ざかり、Aクラス入りは2度のみ。15年以降の8年間で7シーズンが5位以下と暗黒時代に入ってしまった。

 低迷の要因は様々だろう。チーム編成を巡る補強策、ドラフト戦略、若手の伸び悩み…。その中で、打力強化の一環として数年前から議論になっているのが、「ホームランテラスの増設」だ。

 中日を取材するスポーツ紙記者は強調する。

 「ホームランだけが野球の魅力ではないことは承知していますが、得点が入らないと試合が盛り上がらないし、ファンの野球離れが進んでしまう。石川昂弥、細川成也と和製大砲がいるわけですし、ホームランテラスを増設することで目指す野球の質も変わってくると思います。投手の優位性がなくなるという懸念はありますが、他球団の投手は狭い球場を本拠地に投げている。今年のWBCで侍ジャパンに選ばれた中日の野手がゼロだったように、広い球場は強打者が育ちにくい側面がある」

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