長時間のスマホ使用により脳に深刻な悪影響が出る――。そんな衝撃的な事実を突き止めたのが、「脳トレ」で有名な東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授率いる研究チームだ。とくに成長期の子どもの場合は、脳の発達が損なわれるなど、その影響はより深刻だという。デジタル依存から抜け出し、脳が本来の働きを取り戻すにはどうしたらいいのか。同研究所の助教で、『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)を上梓した榊浩平先生に話を聞いた。
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――榊先生の著書『スマホはどこまで脳を壊すか』が、教育関係者に衝撃を与えています。研究から得られた結果について教えていただけますか。
東北大学加齢医学研究所では2010年から毎年、仙台市教育委員会と共同で仙台市の公立小中学校の児童・生徒約7万人を対象に、学習意欲を科学的に研究する大規模調査を行ってきました。その研究から、スマホをはじめとするタブレットやゲーム機、音楽プレーヤーといったデジタルデバイスを、1時間を超えて長く使っている子どもほど学力が低いという結果が出てきました。
当初はスマホ使用の影響で勉強時間が減る、あるいは睡眠不足で集中力が続かなくなるなど、副次的なことが関係しているのではと予測していました。しかし分析したところ、そのような単純なものではなく、子どもたちの脳の発達にデジタルデバイスが影響を及ぼしていることがわかったのです。
――なぜデジタルデバイスを長時間使うと、脳に悪影響が出るのでしょうか。
多くの機械は、人間を楽にするために発明されたものです。スマホも脳に負荷をかけないという点では、非常に優秀な道具です。しかし脳は筋肉と一緒で、使えば使うほど発達するし、逆に使わなければ衰えていきます。デジタルデバイスを使って脳をなまけさせると、子どもの脳が発達しなくなります。
さらに脳の発達に与える影響を明らかにするために、平均年齢11歳の子ども223人を対象に、インターネットの使用と脳の発達について3年間の追跡調査が行われました。子どもたちにインターネットの使用頻度について「機器を持っていない」から「ほぼ毎日使用する」までの7段階で聞き、さらに子どもたちの脳の写真をMRIで撮影しました。
その結果、インターネットをたくさん使っている子どもほど、認知機能を支える前頭前野、記憶や学習に携わる海馬、言葉や感情を処理する領域など、広い範囲で悪影響が見られました(【図1】参照 ※外部配信先では図版などの画像が全部閲覧できない場合があります。図版をご覧になりたい方は、AERA dot.でご覧ください)。