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 とくに「ほぼ毎日使用する」と回答した子どもたちの脳の発達は、ほとんどゼロに近い数値になっていました。研究者は研究成果が大きければ大きいほど醍醐味を感じるものですが、逆にこの結果を見てぞっとしてしまいました。想像以上に悪影響を及ぼしていたのです。

 学習効果だけではありません。コミュニケーションにおいても、対面での会話とオンラインでの会話では、脳の活動が異なることがわかりました。複数人で会話をしていると、脳活動のリズムが会話している人たちの間でそろってくる現象が起こり、この状態を「脳活動が同期している」といいます。

 そこで東北大学の学生に協力を依頼し、対面とオンラインで会話してもらいました。その結果、対面では脳活動が同期しているのに対し、オンラインでは同期していなかったのです。指標を見ると、オンラインで会話しているときの脳活動は、何もしていないときとほぼ同じでした。

 コロナ禍が明けて学校が再開されましたが、「友だちとどう接したらいいかわからない」「対人関係に不安を感じる」という子どもが増え、日本だけでなく世界的な問題になっています。対面をオンラインに置き換えた、ここ2~3年の影響が少なからずあると感じています。

――榊先生はスマホの影響は大人より子どものほうがより深刻だと、危機感を抱いていらっしゃいます。

「思考の中枢」とも呼べる脳の前頭前野は、小学校の高学年から中学生にかけて一気に成長します。前頭前野は自分をコントロールする機能を支える自己管理に欠かせない脳領域なので、未熟なうちからスマホに頼ってしまうと依存するリスクが高まるのです。

 スマホのようなデジタルデバイスは、大人は自分で購入しますから自己責任ともいえます。しかし子どもは、親や学校から渡されなければ手にすることはありません。いわば自分の責任ではないのに、「依存」にさせられてしまうのです。

「GIGAスクール構想」で、学校では子ども1人に1台デバイスが配られています。デジタルデバイスでは効率的に情報を得ることができますが、記憶に残らないので知識を得ることはできません。教材がデジタルデバイスになっても、言葉の意味を調べるのには紙の辞書を使う、また漢字を覚えるときは紙のノートとえんぴつで書くなど、これまでの学習方法と組み合わせていくように、ぜひ工夫してほしいです。

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デジタルデバイスでなければいけないものは意外と少ない