第4に、自民党保守派議員たちが強調する安倍政治の柱、「国債は無限に出せる」という主張が今もかなりの広がりを見せる。

 実は、リベラル側でも「財政規律」という言葉に強く反発する人が増えた。子育ても年金も医療も介護も全て国債で賄えば良いという声が強い。増税はとにかく悪だという考えが市民の大多数の支持を得ている。

 まともな国で、国債はいくら発行しても大丈夫などという暴論が政府与党の間に蔓延することなどあり得ない。かつて事実上財政破綻したアイスランドやギリシャや韓国でも、コロナ前には財政黒字を達成していたし、欧米では、コロナ禍で痛んだ財政を再建するための増税について議論している国ばかりだ。

 世界の中央銀行も日銀の出口なき異次元緩和には、呆れ返っていることを日本人は知らない。

 世界が「日本経済破綻」のリスクを意識する日が近づいている。その時は日本の終わりだ。

 政治家には期待できない。官僚も劣化しマスコミも機能していない。

 そして、最も深刻なことに、多くの国民が安倍的なものに支配されるようになっている。それは、安倍的な考え方に洗脳される人が増えているということだけではない。洗脳されていなくとも、無関心層が増えていくこととリベラル派の中に蔓延する諦め、さらには、国民を覚醒させるためには破綻した方が早いという破綻願望まで広がりつつある。

 こう見てくると、「安倍的なもの」=「妖怪」の支配から脱することがいかに難しいかがわかる。だが、4つの危機を回避するためには、なんとしてもその呪縛から逃れなければならない。

 安倍氏没後1年を経た今、その危機感の共有ができるのか。

 手遅れかもしれないが、それでも、まずはそこから始めるしかない。

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