第1に、前述のとおり、妖怪の支配で、何度やっても選挙の結果は変わらず政権交代は起きないという社会では、投票の意味がわからなくなり、過半の人が選挙に行かないということが起きる。集団的自衛権に反対する大きなデモの波も結局は勝利につながらなかったことで、市民の無力感はさらに募った。諦めが広がり、事実上の専制主義に近づいていく。「民主主義」の深刻な危機だ。
第2に、政府情報の垂れ流しは、国民に、「安全保障環境の激変で中国から身を守らなければならない」という意識を植え付けた。日本国憲法は時代遅れだという考え方も急速に広がっている。
解釈改憲という手段でなし崩し的に平和憲法を葬り去る方法も使われた。敵基地攻撃能力も防衛装備移転三原則も国有武器工場制度の導入も大きな議論なく進められている。
その結果、ついに、日本は、台湾有事から逃げるどころか、その主役の位置に固定されてしまった。もはや台湾有事=日本有事という命題は国家の最高規範に昇華した感さえある。
英BBCは2022年5月に、「日本は静かに平和主義を放棄している」と報じたが、肝心の日本国民にはその自覚がない。「平和主義」が崩壊の危機にあるとは誰も思っていないかのようだ。
第3に、防衛費GDP比1%枠撤廃と2%への拡大。さらに余った資金があったら全ては優先的に防衛費に回すという防衛財源確保法は非常に象徴的な意味を持つ。
これによって、仮に戦争が起きなくても、その準備のために制約なくあらゆるリソースを防衛費に投じることになる。相手が超大国の中国だから、その規模は壮大なものになるだろう。
軍事優先が国是となれば、社会保障や教育などは後回しになり、3度の食事に事欠く国民が増えても、「国家あっての国民だ」と切り捨てられるだろう。
軍事費を抑制して国民生活を優先するという戦後一貫した「国民生活優先主義」が崩壊することが決まったのである。