主催した「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(2019年4月)。神格化の動きもあるという。
主催した「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(2019年4月)。神格化の動きもあるという。

 だが、今や、台湾有事=日本有事は当然とばかりに中国との戦争準備が進んでいる。安倍氏がいなければ、戦争を回避できたのに、自ら巻き込まれる道を開いたという点だけ見ても、外交安保では明らかに失敗だったと言って良い。

 ここまで考えて、はたと気づくことがある。安倍政治がなければということと同時に、「岸田政治がなければ」ということも考える必要があるということだ。敵基地攻撃能力の保有も防衛費倍増も安倍氏はできなかったが岸田氏が決めた。戦争に向かう原動力として岸田氏の力も無視できない。

 そこで、最近流行っているのが、宏池会出身でハト派だったはずの岸田首相がなぜ安倍氏を超えるほどのタカ派になったのかというお題の記事である。

 これに対する私の答は、
「安倍氏が旧統一教会という反日団体、これと正反対の日本会議などの国粋主義的右翼団体などを合同させて岩盤保守層としてまとめ上げたことと、前述した4つの負のレガシーが共振して起きている現象である」というものだ。全て安倍氏が原因である。

 比喩的に言えば、その裏には不死身の「妖怪」の働きがある。岸信介元首相は「昭和の妖怪」と呼ばれ、安倍元首相はその孫だから「妖怪の孫」なのだが、それで終わりというわけではない。安倍元首相亡き後も、そこに残された妖怪は、安倍氏の負のレガシーが作った「妖怪にとって極めて快適な環境」の中で、むしろ感染力を高めて人々を蝕んでいる。岸田氏もその影響下で操られる人形の一つだ。

 例えば、4つの負のレガシーの一つ、「官僚支配」は長い安倍政治の中で完全に霞が関に根付いてしまった。心ある官僚たちが「テロ」と呼んだ解釈改憲というあり得ない手段を使ってまで押し通した集団的自衛権。

 その前提となったのが、これまで聖域とされてきた内閣法制局長官人事だった。集団的自衛権は違憲だという戦後一貫して続いた政府の公式見解を踏襲する当時の法制局長官(官僚の中の官僚と言われる)をクビにして、これを合憲だと言い張る外務官僚を長官に抜擢した。内閣人事局が設置される前のことだ。それ以降、官僚は完全に時の政権の言いなりになり、過ちを政府内部から正す道が断たれた。

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