今や、岩盤保守層の支持を失えば自民党議員でも落選の危機となるので、安倍派はもちろんそれ以外の派閥の議員でさえ、彼らの御機嫌取りに精を出す。
右翼的ポピュリズムが蔓延し、その頂点の地位を守るために岸田首相は、安倍派の幹部と仲良くするだけでは済まない。岩盤保守層に、右翼としての正統性を証明することが必要だ。岸田氏の場合、ハト派ではないかと疑われる分、安倍氏よりさらに先鋭的な安倍的政治を行わざるを得ない。宏池会だからハト派などという図式はもはや当てはまりようがない構造になっているのだ。
多くの自民党議員が、「安倍氏の遺志を継ぐ」「安倍政治を継承する」と声高に叫ぶのを目にした人も多いだろう。これも同じ構図だ。本気で安倍氏を信奉する者はもちろん、そうでない者も安倍信者を装わないと生きていけないかのように見える。安倍氏の神格化が止まらなくなっているのだろうか。
岩盤保守層に大きく依存してきた安倍派議員などは、生命線を握られている旧統一教会などと縁を切ることは不可能となった。その影響もあり、LGBTQに対して異様なまでの敵視政策に傾いてしまう。
岩盤保守という言葉により、全ての思考が止まる。選挙を意識すると、右翼的ポピュリズムの政策しか出てこない。個々の議員の本来の思想や政策とは無関係に、自民党全体が、戦争準備と国債乱発のばら撒き政策が結びついたイケイケどんどんの危険な暴走集団と化すのである。
それでも選挙では、また勝利し、それが民意となって、岸田首相をさらに縛る。壮大な悪循環だ。
安倍氏は戦争できる国づくりに励んだが、妖怪に操られる岸田氏は、「本当に戦争する準備」を進めるしかないのだ。
ここまで見てくると、安倍的なものの支配は、日本に4つの危機をもたらしていることに気づく。いずれも戦後日本の「国の形」を決めていた重要な哲学に関するものだ。
すなわち、「民主主義の危機」「平和主義の危機(戦争の危機と言っても良い)」「国民生活優先主義の危機」そして「日本経済破綻の危機」である。