あの日は、セクシャリティについてのカミングアウトも飛び出しました。高校時代、体育祭で上半身裸になるのが本当に嫌だったとか、大好きなお母さんに「女の人を好きになれないかもしれない」って打ち明けたらすごく悲しい顔をされて、「ウソだよ」ってごまかした話とか。イベントの数ヵ月前にpecoさんとの婚姻関係解消を発表して以降、その原因について色々と憶測が飛び交っていたんですけど、ryuchellの口から自身の性についての話を聞くのは初めてで、取材に来ていた記者さんも驚いた様子でした。

 でも、どんな話をしていても、弱音は一切出てこないんですよ。婚姻関係の解消をきっかけに、世間からすごくたたかれていた時期だったんですけど、「芸能界における商品としてのryuchellは、自分や限られた人しか知らない本物のryuchellとは違うから、いくら誹謗中傷されても傷つかないんだよ」って言ってました。

「心ない言葉をぶつけてくる人を見ると、『この人って今日ご飯食べたのかな?』とか『今、心が傷ついてるのかな?』って思う」とまで話していて、まだ若いのになんでここまで達観した考えを持てるのかなって、不思議で。私なんて2倍近く生きているのに、ryuchellとトークをすることに対して嫌なコメントを書かれただけで落ち込んじゃう。ryuchellの強さと優しさに、ただただ圧倒されました。

 イベントが終わると、ryuchellは「今日はとっても楽しかった。大好きな沖縄で、言いたいことを言えてよかった」ってうれしそうでした。

「東京では、心がすり減る。売れれば売れるほど、みんなからの扱いも変わるし、何か大事なものを失う感覚がある。でも沖縄に帰ってきたら、『あ、ryuchell帰ってきた! おい、ドライブ行くぞー!』って、東京で売れてるとかそんなことはまったく無視する人たちがいて、なによりホッとするんです。素の自分をそのまま受け止めてくれる沖縄があるからこそ、自分を保てている気がする。沖縄は、人を大事にしてくれる宝のような場所。まだまだ解決しないといけない問題はあるかもしれないけど、変わらなくていいところもいっぱいあるよ」

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ryuchellの死は“ちむぐりさん”