■なぜここに?埼玉県「ポツンと一軒のラーメン屋」
武蔵高萩駅から1キロメートルほど歩くと、のどかな町の中にポツンと一軒のラーメン店が現れる。「麺屋 真心」だ。周囲にはシャッターが開かないお店がたくさん。バスも通らないエリアだが、「食べログ」や「ラーメンデータベース」といった口コミサイトでも軒並み高得点の付く大人気店だ。筆者もさまざまなラーメン店を訪れてきたが、この立地で人気店を育て上げたことに驚いた。
店主の日塔涼さんは山形県出身。高校時代は調理科で学んだ。小さい頃からの夢は「社長」。いつか独立し、自分の店を持つことを夢見ていた。
山形は日本有数の“ラーメン県”で、ラーメンは日常にある当たり前のもの。日塔さんも外食をするといえばラーメンで、家の周りには200メートルごとにラーメン店があったという。当時好きだったのが寒河江市にある「福家そばや」のワンタンメンだった。
卒業後は、地元を離れ、埼玉県狭山市にある菓子メーカー「かにや」に就職。1年間販売の仕事をし、その後工場勤務となった。
「やりがいのある仕事だったのですが、販売の仕事だと自分でお菓子を作っているわけではないし、工場勤務だとお客さんの声がダイレクトに聞こえない。そのどちらもかなえられる仕事はないかなと漠然と考えていました」(日塔さん)
2年半勤めて、その後国道16号線沿いの「中華そば 青葉 狭山店」に社員として入ることになった。自分の作ったラーメンをお客さんが目の前で食べてよろこんでくれる。まさに日塔さんのやりたい仕事がここにあった。「青葉」で働いている間に「ラーメン屋として独立したい」という気持ちが湧いてきた。
その後、池袋の大行列店「無敵家」に移る。行列店がどんなオペレーションでお店を回しているかを学びたかったからだ。激戦区・池袋を代表する人気店の次元の違う忙しさに驚きながらも、週6でシフトに入り必死で修業した。
そしていよいよ独立の時が来る。義理の父に背中を押され、18年3月に「麺屋 真心」をオープンした。26歳の時だった。