エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「祖父母手帳」というものがあると知りました。共働きの増加で祖父母たちが孫の子育てに手を貸す機会が増え、それに伴って祖父母世代の子育ての常識のアップデートが必要になっているというのです。子どもの世話や教育をめぐって、じいじばあばとパパママの方針が対立したり、感情の行き違いが起きたりしないよう、母子手帳と一緒に祖父母手帳を渡す自治体もあるそうです。

 例えば「抱っこしすぎると抱き癖がつく」と信じる祖父母と、たくさん抱っこしてしっかり愛着形成をしたい親世代。どちらもよかれと思ってのことなので、話が拗(こじ)れやすいですよね。祖父母の知識のアップデートは不可欠ですし、共働き夫婦も祖父母の体力的・精神的な限界を想像する必要があります。子どものエネルギーは無限なので(笑)、親はヘトヘトになることも。30代がやってきついことを60代、70代がやるのはもっときついでしょう。

子どもを育てる親世代と祖父母世代、人権や多様性についての学び合いも大切だ(写真:gettyimages)
子どもを育てる親世代と祖父母世代、人権や多様性についての学び合いも大切だ(写真:gettyimages)

 子育てのやり方のほかに、大切なのはジェンダーや多様性に関する考え方の更新ではないかと思います。大人の日常的な言葉がけが、価値観の刷り込みになってしまうことも。例えば「かわいいね」「イケメンだね」と容姿ばかりをほめる。「モテる・モテない」で人を評価したり揶揄(からか)ったりする。「女の子はお行儀よくね」「男の子は泣かないの」「女の子だからピンクね」「そんなの女の子みたいだよ」など、男らしさ・女らしさの決めつけ。「あの子ハーフだね」「ガイジンなのに日本語上手いね」と文化や人種の異なる人を異物扱いする。「変なことをすると笑われるよ」「そんなのは恥ずかしいよ」と恥の意識を刷り込んで同調させようとする。子育てのやり方だけでなく、人権尊重や多様性の理解、偏見の解消など、祖父母世代と親世代で日頃から話題にして学び合いたいですね。

◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。

AERA 2023年7月17日号

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