昨シーズンのオフは4年ぶりに4人の選手が国内フリーエージェント権を行使して他球団に移籍するなど活発な動きを見せたが、その中心となったのが捕手だった。
バリバリのレギュラーである森友哉(西武→オリックス)だけではなく、2番手捕手の嶺井博希(DeNA→ソフトバンク)、伏見寅威(オリックス→日本ハム)も好条件で移籍。またトレードでも加藤匠馬(ロッテ→中日)、石川亮(日本ハム→オリックス)に続いて先日は宇佐見真吾(日本ハム→中日)と郡司裕也(中日→日本ハム)が移籍し、宇佐見と郡司は早くも新天地で存在感を示している。こういった事例を見ると、他球団に移籍すれば活躍できる余地のある選手は他にもいるのではないだろうか。
大城卓三が完全にレギュラーに定着した巨人ではかつての正捕手である小林誠司のトレードの噂がよく聞かれるが、小林以上に“市場価値”が高いと見られるのが岸田行倫だ。大城と同じ2017年のドラフト2位でプロ入りしたものの、大城の出世を尻目に過去5年間の一軍出場は90試合にとどまっている。今年も開幕一軍こそ勝ち取ったものの4月中旬には登録抹消となり、ようやく一軍登録されたのが6月2日のことだった。
そんな岸田が脚光を浴びたのが6月30日の阪神戦(東京ドーム)だ。延長10回に代打で出場すると、試合を決めるサヨナラホームランをライトスタンドに叩き込んで見せたのだ。元々守備力には定評があり、バッティングも捕手らしい配球を読んだ思い切りの良さが光る。巨人としても今が旬と言える年齢の岸田を簡単に放出するとは思えないが、若手の山瀬慎之助が成長してきているだけに、交換条件次第ではトレードに応じることもあるのではないだろうか。大城とは3歳しか年齢が変わらず(学年は4学年)、このまま控えに甘んじているのはもったいないという声も多いだけに、密かに狙っている球団もあるはずだ。
昨年オフに嶺井を獲得したソフトバンクも捕手が“渋滞”している印象を受ける。中でも嶺井が加入した影響を大きく受けているのが海野隆司だ。大学時代から抜群の守備力が高く評価されて2019年のドラフト2位で入団。二軍では早くから多くの試合に起用され、昨年は正捕手の甲斐拓也が離脱したタイミングではスタメンを任せられるなど一軍でも自己最多の47試合に出場している。
しかし今年は嶺井の加入によって出番が激減。ここまで途中出場で5試合に出場しただけで、5月以降は二軍暮らしが続いている。二軍では7月7日のオリックス戦で2打席連続スリーランを放つなどアピールを見せているが、今のチーム事情では甲斐と嶺井に故障がなければ一軍でのプレーは難しいと言わざるを得ない。こちらも岸田と同様にドラフト上位で指名し、年齢的にもまだ若いだけに簡単にトレード要員となることはなさそうだが、オフにFAの人的補償でプロテクトから外れるようなことになれば、移籍の可能性が出てくることもありそうだ。