郡司は捕手ながら打撃が買われて指名打者での出場も増えているが、このように打撃を生かして勝負しても面白いのではと感じさせる捕手も存在している。中でもやはり打者としての開花に期待したいのが中村奨成だ。4年目の2021年にようやく一軍で初ホームランを放ち、少ない打席数ながら3割近い打率を残して開花を予感させたが昨年は再び低迷。今年も4月の試合中に左足首を痛めて長期離脱を余儀なくされている。

 チームは一学年上の坂倉将吾が完全に正捕手に定着し、控えの捕手もベテラン、中堅、若手が揃っているため、中村の入る余地はほとんどない印象は否めない。それであれば完全に違うポジションで勝負した方が本人にとってもチームにとってもプラスは大きいのではないだろうか。二軍では怪我で離脱する前は14打数7安打と順調なスタートを切っており、打撃にはまだまだ成長する余地があるように見られる。環境を変えなくても、ポジションを変えることで、高校時代の輝きを取り戻す可能性もあるだろう。

 今シーズンの途中にトレードされた郡司や宇佐見の新天地での活躍を見ていると、やはり必要とされるチームでプレーすることの重要さがよく分かる。特にレギュラーとして出場できる選手が1人しかいないキャッチャーというポジションではよりそのことを実感させられる。今後も環境、もしくはポジションを変えて花開くプレイヤーが出てくることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文 1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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