※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 社会人になってから外部の教育機関で新たなスキルや知識を身につけるリカレント教育。本格的に研究に打ち込むなら、2年間かけてじっくり取り組める大学院修士課程がお薦めだ。注目されるテーマのなかから2つ、重要な資料を収集、整理して保存し後世に伝えていく「アーキビスト育成」と、人と組織の課題を解決できる高度専門職者を育成するプログラムについて、AERAムック『大学院・通信制大学2024』で取材した。

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「アーキビスト育成」の大学院として、今回取材したのは学習院大学大学院アーカイブズ学専攻だ。社会を支える基礎となる記録資料を扱うプロフェッショナルになるために必要な知識とノウハウを学ぶ場だ。また、次世代リーダー育成プログラムとして取材したのは立教大学大学院リーダーシップ開発コース。人と組織の課題を解決できる能力を身につけることができるという。これら2つの大学院の取り組みを順に見ていこう。

■人間活動の重要な記録を共有し、大切な記憶を伝えていく

 過去10年の間に、いわゆる「モリ・カケ・サクラ」(森友学園、加計学園、桜を見る会)問題を始め公文書の不適切な扱いが次々と明らかになった。こうした記録の保存や公開についての専門知識やノウハウを持つのがアーキビストだ。

 学習院大学大学院人文科学研究科アーカイブズ学専攻は、アーカイブズ学を研究しアーキビストを育成するため、2008年に開設された。アーカイブズ学演習などの科目を担当する保坂裕興教授は「役所が公文書を管理したり、博物館や図書館が歴史資料などを収集するというのがアーカイブズについての一般的な認識だと思います。しかしそれだけではなく、人間の活動に伴って作られるさまざまな文書を評価選別し、重要な記録、つまりアーカイブズとして保存し、利用に供するのがアーキビストの役割です」と解説する。

 アーカイブズという言葉は、重要な記録そのものを指す場合と、記録を保管する建物や施設を意味する場合とがある。その歴史は古く、欧州の公文書館では羊皮紙にラテン語で書かれた古文書や、近世の戦争の講和条約・議定書なども見ることができる。

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あらゆる人間活動に関する重要な記録を残すアーキビスト