西川のりおさん(撮影/中西正男)
西川のりおさん(撮影/中西正男)

要は危険、ムチャクチャという要素にも二種類あるということです。それで言うと今、現役で僕が気になっているのが「霜降り明星」の粗品です。

粗品はね、破滅型なんですよ。むちゃくちゃオモロイ。オモロイけど、破滅型だから、この先どうなっていくのか。後輩としたら心配なところもありますけど、一人の視聴者としては粗品が今後どんな生きざまを見せてくれるのか、目が離せない存在でもあります。

そんな人間が少なくなった今、粗品にはどうしても目がいきますし、ある種の母性をくすぐられるというか、「こいつ、大丈夫やろか」とホンマに思います。それくらい、危険な香りがするんですよね。

ただ、最近はね、そもそも芸人に危なっかしさやムチャクチャさが求められない時代にもなりました。それが世の中の流れだし、その流れに乗ることが仕事につながるのも事実だとは思います。事実として、今の時代、そこに需要はあるわけですから。

でもね、これは僕の考えですけど、それをやると芸人としての寿命が短くなると思っているんです。

時代に合わせたコメンテーター的なことをやる。そうすれば、ひとまず仕事はあるかもしれませんけど、その枠というのはね、入れ替わるんですよ。次々と新しい人間が出てくる。結局、長い目で見るとね、それが得策とは思えない。

芸人にとって大事なことは「ベースを崩さないこと」だと思います。舞台で自分たちの漫才をしっかりとやり続ける。そして、自分の色を変えない。そこに時代が合わなければ仕事に結びつかないかもしれませんけど、実は、そんなタイプのほうが結局長持ちしてたりするんですよ。

この前もね、ある報道番組に僕を出すみたいな話をマネージャーがテレビ局の人としてくれたみたいなんですけど、そこで言われたそうです。

「のりお師匠にこの番組に出てもらうのはありがたいことですけど、ちょっと怖いというか。危ないというか」

そこでね、僕はニタッと笑ったんです。「まだ、オレ、芸人として寿命があるわ」と。そう思われているということは、僕がやっている芸がきちんと伝わっているということですし、丸くもなっていない。ちゃんと「危ない」と思われている。これはね、ホンマにうれしい評価でしたね。

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「最後まで強がる」「譲らない」も大事